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記憶の底に隠れる前に

気になる言葉から日常話まで
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楽しくしてくれる出会い

数年前、画家の須田剋太さんの絵を見に行った時に、伊古奈に喫茶美術館が建てられた際のパンフレットと挨拶文を頂いて帰りました。

>伊古奈・喫茶美術館によせる 須田剋太 1988.5.1
>(前略)
>人と人との出会いは、他人に如何したらお互い楽しく、やさしく生きられますかと云うセリフが出る場が必要です。不図、向うの椅子に座っている人が、何等かの縁で、私の心を楽しくしてくれる事を頼むものなのです。そんな場が、伊古奈の喫茶・美術館で、実現化出来たらいいがなあ!と云う私の願望です。
>(後略)

出会いに必要な場所がある。それを作ろうとしている。
そこまでは理解出来たのですが、その後の「私の心を楽しくしてくれる」の部分がどうしても飲み込めませんでした。
再会ならともかく、出会いの段階で誰かに何かを求める? 自分から何かをするのではなくて?
だけど、利己的なものを感じない文章に、捨てずに残しておくことにしました。
誰かの為に残した文章。飲み込めなくても、手元には置いておける。そういう類のものでした。
そして、最近ようやく、この文章の意味が飲み込めるようになってきました。

喫茶美術館ということは、知らない人同士が同じ絵が目に止まったことで話が出来る可能性があります。
それをきっかけに、やさしく楽しく話すことができたら、扉をくぐって外に出て再び他人に戻ったとしても、心は楽しいままだと思います。
出会いは出会い以上のものを求めていなかった。

本当の答えは分からないけれど、これですっきりしました。
年月が教えてくれるものもあるんですね。
挨拶文は元の場所に片付けておいて、また、何かが引っかかってくるのを待っていようと思います。

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