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記憶の底に隠れる前に

気になる言葉から日常話まで
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変化を愉しむ
学生時代、毎月のように行っていた美術館があります。
現代美術館らしい建物で、入り口には良く分からないオブジェが沢山ありました。
つるんとした外観は何年も変わることなく、輝いていました。多分、今も変わっていないでしょう。

二階から始まる特別展示室は、一階の展示室に繋がっています。
螺旋階段を降りた先に、気になる作品がありました。
ガラス張りになって外が見えます。つまり、作品は外にあるのです。
細いレンガを地面に突き刺してある凸凹のスペース。
傍にはプレートがあって、「変わっていく様子をお愉しみください」と書かれていたと記憶しています。

春の雨がその一角に艶やかな色を落とし、
夏の太陽に照り付けられてレンガが濃くなり、
秋の落ち葉がどこからともなく落ちて、
冬の粉雪が間に入り込み休んでいく。

屋根がないのでレンガも色褪せます。
時間と自然と作者の合作。二度と同じものを見ることはありません。
それがとても貴重なものに思えるのです。
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裏テーマ

月日は百代の過客にして行きかう人もまた旅人なり。
かの有名な奥の細道の冒頭ですね。

自分の作品を読み返してみると、もう、これが根本にあるとしか思えません。
全然意図せずに書いていたのですが、気が付いたら「道」や「旅」だらけ(笑)。

ええと、つまり改稿しようと思ったのに、しみじみしてしまった訳ですね…。
片づけをしようとしてアルバムを見続けてしまったのに似ています。

移ろいながら道標となる自然の色たち

作品情報:「木の花染め」 (文庫本換算約4頁)
       「落花」 (文庫本換算約17頁)

著者:にっけさま

サイト:La Historia(ラ・イストリア) 
http://members2.jcom.home.ne.jp/leaf/

作品の場所(2007/7/23現在):創作小説 その他のお話

―――――――――――――――――――――――――――――――

「木の花染め」は染色家・志光が有名な作品を仕上げた直後に出会った桜のお話です。
息子への言葉と妻からの言葉から、彼がどれだけ桜染めに人生を注いでいるかが伝わってきます。
桜染めの糸を解く描写が、朝露に濡れながら咲く桜の花のようで、染めへの愛を感じます。
そして、染物を届けに行く山里で出会った夜桜は鮮やかに「咲う」。
咲う(わらう)という言葉をはじめて知りました。とても印象的なシーンです。
初春らしい山野草のような苦さの残る色が思い浮かぶ作品でした。

「落花」は駆け出しの染織家・ゆきが、父親が倒れた知らせを受けて田舎に帰るところから始まるお話です。
専門的な織りの作業工程は「あとがき」でイラストにしてあるので、とても分りやすく読み進めることができました。
「染め」だけでなく、「織り」に触れたことで、糸の表情が変わっていくように話が進んでいくのが素敵です。
ゆきの葛藤とそれに手を差しのべる水上の存在。
織り機に張られた糸が示す人生の形。
ゆきのこれからの人生を思わせる清くて潔い色が思い浮かぶ作品でした。

ふたつの作品は姉妹作です。
「主人公も時代も違うのにどうしてだろう?」と思いながら、読みすすめていくと謎が解けました。
材料は「桜染」という共通のものなのです。だから、根っこのところで繋がっている。
けれど、発色と色どめに使う媒染剤(ばいせんざい)が違うのか、もともと桜が持っている性質が違うのか、同じ材料を使っているのに違う色が浮かんでいます。
それが人工染料では有り得ない、自然の色の美しさに繋がっているように思えます。
作品を並べてみると、光や風に踊ってさらに色の違いが現れてくるような、新たな発見がありました。
哀しさも苦しさも喜びも潔さもすべては移ろう色の中にあるのかもしれない。
ぜひ、ふたつセットで読まれることをおすすめします。

ヨコハマ買出し紀行の見守る切なさ

ヨコハマ買出し紀行(アフタヌーンKC)全14巻完結

水に沈んでいく小さな島国でマスターの帰りを待ちながら喫茶店を守るロボットと、周りの人々の話です。
作中では『ロボット』のことを『ロボットの人』といいます。
それだけ、人間よりも人間くさいロボットたちです。
成長していずれ世の中から消えてしまう人間たちと、時間の流れのようにそれを見ていくロボットの人たち。
切なくて、哀しいけれど、そこには優しさが溢れています。
「ああ、この子がこんなに大きくなって」
「うわぁ、先生。こんなにお年を召されて」
と、主人公のアルファさんと一緒に一喜一憂してしまいます(笑)。

もしかしたらマニアックな本なのでしょうか?
大きな本屋で検索システムを使用して探しても、手の届きようがない棚の一番上にあったり、在庫の奥底から見つかったりします。
一話完結型と言ってもいい話の進め方なので、見つかった時に手にしています。
普通は一巻から順番に集めないと、話が分らないのですが、この作品はそういったことは気になりません。
なので、大きな本屋に行った時の楽しみに残してあります。
ここならあるかも~といった探し方は砂浜の貝殻探しに似ているかもしれません。

ノリは芸人?

異界の境界の緑 「第十二話 木留(ザクロ)」をUPしました!

やぁっと更新出来ました!
毎度の事ながら、書いては消しを繰り返して、ようやく出来ました…が暗い。暗すぎる。
やっぱり病んでいるんだろうか。
それともこんなのばっかり書いているのがいけないんだろうかと悶々としています。
楽しむために書いているのに変だなぁ。
早く祖堂を通り過ぎないかなと、書いている本人が思います(笑)。

次のコウモリもちょっと暗いです。
こっちは基本ギャグなので、かなりアバウトな暗さですが。
コウモリが終わったら、掌編を書いていこうと計画中です。
何たってオチもつけやすいし、スベりにくい!
勢いをつけようとする自分が何だか、ネタを考える一発芸人のように思えてきます。

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